紫外レーザーやフェムト秒パルスレーザーを用いた高品位レーザー加工は、個々のニーズに応える超スマート生産(Society 5.0)を実現する最有力手段と考えられています。個々の目的に応じた高品質な加工を実現するためにはどんなパラメータでどのように物が切れるのかを知る必要がありますが、そもそもいったい何故レーザーでものが切れるのか、未だ明らかになっていません。
小林研究室では、切断の基礎過程から実応用へ至る数桁におよぶマルチスケールな現象が、どのように繋がっているのかを明らかにすることで、レーザー加工の学理を構築しています。
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物質中におけるエネルギー散逸過程とレーザー加工
強力な超短レーザーパルスが物質に照射されると、物質のなかにいる電子たちが激しく揺さぶられます。強力な光電場により揺さぶられ高い運動エネルギーを得た電子たちは、1ピコ秒(10のマイナス12乗秒)という極めて短い時間のうちに物質の骨格である格子へ、そのエネルギーを放出し、数千度・10万気圧を超える高温高圧の極限的状態がつくられます。この結果引き起こされる物質の破壊(レーザーアブレーション)は、光の場からエネルギーを受ける電子・プラズマ系とそれらにより駆動される格子-原子・イオン系が非平衡・多成分・多階層系として相互作用して不可逆な破壊へ至る挑戦的で大変面白い研究対象です。
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加工の学理構築によるレーザー加工の最適化
フェムト秒レーザーによる金属表面の超撥水加工